HTML5のeditor募集とHTML.nextにむけたHTML WGのプラン
HTML WG co-chairのMaciej Stachowiakが、HTML5のeditorを募集するというメールを出している。
HTML5のファイナライズ、つまり勧告をみる時期にきている。一方で、「ポストHTML5」な機能についても考えはじめなければならない。新しい機能については、既にHixieがもういろいろやり始めていて、その中でHTML5の勧告に向けた作業については誰か引き継いでくれないかと依頼があったと。そういうわけで彼がeditorをつとめていたHTML5仕様とCanvas 2D Context仕様のeditorを募集すると。
HixieにW3C版の作業をする気はもうないので、こういうことになったんだろう。彼がWebAppsでeditorをつとめてる仕様(Workersやらいろいろ)の更新は既に人に任せていたりもするし、それをHTML WGでもやってくれということ。ただ、HTML WGの場合は仕様が大きく、まだいろいろissueもある。そこらへんも対応するとなると、ほぼ仕様の更新作業だけなWebAppsとはわけが違う。
さて、MaciejのメールではHTML.nextに向けた動きについても触れている。HTML WGの変更としてあげられた6点をざっくり訳す。
- W3CはHTML5仕様とCanvas 2D Context仕様の勧告に向け、その作業を担当するeditorを募集する。期間は30日をみている。
- 将来的にHTML WGの成果物となるもののインプットとなりうる提案も歓迎する。提案はCommunity Group, HTML WG内のTask Force, HTML WG内などを問わない。
- Ian (Hickson) はWHATWG HTML仕様の編集を続ける。WHATWG HTML仕様も前述した提案のひとつと見込んでいる。
- 勧告に向けた作業をするeditorとHTML.nextへの提案の作成者は、不整合などを起こさないよう共同で作業にあたることが望まれるが、各仕様の変更は直接行なってよい。
- HTML5仕様と並行してHTML.nextの作業を開始できるように、W3CはHTML WGのcharterを延長する手続きを始めた。HTML WGがrecharterされたら、HTML.nextに対する提案の評価および、HTML.nextのeditorを探しはじめる。
- HTML5の作業と同様、W3CとWHATWGは今後のWebに対し適切な機能を策定するために協力していく。
Charterの延長なのかrecharterなのか
気になっているのが、5番目のHTML WGのcharterに関するもの。一文目にはcharterを延長とあるんだけど、その次の文はrecharterについて説明している。
延長とrecharterはどう違うかというと、めんどさが違う。Charterの延長は、DirectorがAdvisory Committeeに報告するくらいで、そんなに大したことはないはず。実際に去年延長したけれど、とくに混乱もなかったし。
ただこれがrecharterとなると、めんどくなる。Recharterは、まず新しいcharterの作成にはじまり、次にACのレビューを通し、そして新しいWGとして再出発するというステップを踏む。今まで参加してたひとも全部解除されて、また参加の手続きをふまなければいけない。
Charterの作成は、いまのcharterをベースにはするんだろうけれど、HTML.nextが入るのであれば、どういった機能が検討されているか、そのおおよその範囲を考えて含めなければいけない。言及のない機能についてはそのWGで作業できなかったりするので、多くの機能を入れたいのであればいろいろ考えることになる。
ただ、機能がありすぎたりするとWebAppsみたいにカオスになる。あと、特定の範囲について、どこかのMemberが意見を言う可能性もある。WebEvents WG, Geolocation WG, Notification WGみたく、どこかの反対があると小さなWGにしかできず、さらにTouch Events vs. Appleみたいなことも起こりかねない。
ACのレビューについては他にも、Decision Policyやワークモードに関して意見が出るかもしれない。アクセシビリティ界隈から強い声もでると思う。そういうのを解決して、charterのdraftを更新して、またレビューにかけて…と、途方もなく長くなるかもしれない。
なのでrecharterなんて、本当にできるのかって気がするんだけど、するのかね。ふぁいと!
WHATWGがCommunity Groupに
W3CとWHATWGは引き続き協力、とあるけれど、WHATWGをCommunity Groupにする動きが始まっている。
WHATWGについては、特許ポリシーが弱いという批判がある。詳しくは知らないけれど、こうしたポリシー関連の不都合で、企業としての参加を阻んでいるケースがある。代表的なのがMicrosoftで、こないだも、innerHTMLやinsertAdjacentHTML()がDOM Parsing & Serialization仕様に移動したとき、その仕様がW3Cでホストされていないのでissueになった。彼らが発明したものだから、特許情報の開示とかそういうのはおいといても、ポリシーは必要なのかなと。
あとは、仕様書のライセンスもちょくちょく問題になっている。こちらも詳しく知らないんだけれど、今のW3C Licenseだとforkはおろか教育目的の利用なんかもできないという話があったりする。それは実情に即してないし、柔軟性もない。さっきのDOM P&SやDOM4 (のED)やらがCC0を採用しているのは、そうしたライセンスへの反発と、オープン標準を強く意識してるところがある。
WHATWGをCommunity Groupとして位置づけることで、ポリシーとライセンスが解決できる。
というわけで早速できた。早いなあ。
コミュニケーションルールは引き続きWHATWGのものを使って、仕様の公開に関してはCGを利用ということらしい。他のCGでも似たようなことをやってるので、そんな新しいわけではない。こういうバックドアちっくな流れが広まっているのを見ると、W3C Processの改訂もうちょっと急いだほうがいいんではと思ってしまう。
結局どうなんのよ
長くなってしまった。
HTML5についてはそう極端に変わる(WHATWG HTMLから完全に独立するとか、W3Cオリジナルの機能が入るとか)はないかなあと。Maciejのメールのフォローアップのひとつとして公開されたDraft HTML5 Stabilization Planを読んでも、そんな変わりそうな気配はない。
WHATCGについても、今のところ仕様の公開元を解決するために使う感じなので、WHATWG HTMLにもとくに変化はないだろう。Microsoftが入るとか、そういうのはわかんないけど。